最終更新日 2021年6月20日 by co-in
こんにちは。co-inです。 CompanyとInterpreterの頭文字2文字ずつを取ってco-inです。名前の通り、通訳業界でのサービスをはじめ、1年弱が経過しました。
大変久しぶりではありますが、この「私達の想い」ジャンルでの記事を書きます。前回から1年弱が経過してしまいました。この1年のご報告や、1年を経て考えていることや分かったことをこちらで共有できればと思っております。
Contents
近況報告
昨年5月にこのHPを立ち上げてから、より業界を知るために通訳案件を行ってきました。
- HPで案件を得るためのSEO対策
- (free web hopeさんのマケスタは無料でめちゃくちゃ良いコンテンツでした。。。LIGさんやS-fleageさんのSEO講座もとても参考になりました。)
- 「Zoom 通訳」や「通訳 頼み方」などの意図したワードのいくつかでGoogleの上位表示を獲得できました
- その結果としてHP経由での受注を得ることができました。
- 実際の通訳案件(通訳者の方と連携)
- 案件のご紹介方法、情報のアップデート方法、普段のやりとりについてはビジネスチャットを使って行わせていただきました。
- 案件を受けていただいた通訳者の方にフィードバックをいただき、使い方や連絡方法について都度改善を重ねております。
- 他社と比較した上で、信じて頼んでいただけるケースももありました。比較対象の中には、大手が複数入っている場合もあり、大変ありがたく自信にもなりました。
- プロダクトのプロトタイプ作成の開始
- 実際に使うことができるプロダクトの試作をはじめました。
- 今後早い内に実際の案件でも使っていければと思っております。
- 派生:Zoom会議の運営補助
- 「Zoom通訳」等の検索ワードで上位表示を獲得できたことによりZoomを用いた会議の運営補助についてお問い合わせをいただくことも多数ありました。
私達を信じて案件を頼んでいただきました企業の皆様、また信じて案件を一緒に行っていただいた通訳者の皆様、改めてありがとうございます。結果として、多くの案件で「co-inさんは理想の形に近い」「通訳者の立場に立った業務を行ってくれている」とおっしゃっていただけました。引き続き同じようなパフォーマンスができるように励んでいきます。
一方で、すべての案件を受注できたわけではありませんでした。仮案件の状態のまま失注してしまった案件もありました。。予定を空けていただいた通訳者の皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
まだ一緒にお仕事をできていない方とも今後一緒にお仕事をしたいです。そのために、1つでも多くの案件を受注し、co-inの案件はやりやすいと思ってもらえるように努力いたします。引き続きco-inをよろしくお願いいたします。
昨年書いた「私達の想い」について
昨年の「私達の想い」では、以下の3点を目指していきたいと書かせていただきました。
- 通訳者がコア業務により集中できる仕組み作り
- 潜在需要へのアプローチ
- 人の手による付加価値
今も大きな方針としては同じことを実現したいと思っております。そして、
この想いを実現するためにも、早急にプロダクトのベータ版を使い始めようと思っています。ベータ版にご参加いただける通訳者・企業の方、双方から色々フィードバックをいただければと思っております。
この1年で感じた企業と通訳者のギャップ
通訳業界の内と外とで「通訳」というものの期待値が大きく違うことを改めて感じた一年でした。
なぜ、期待値の違いが起きるのか、少しでもギャップをなくすために何ができるのかを考えてみました。
まず、それぞれの期待値について考えてみました。
依頼者は「ほんやくコンニャク」がほしい
通訳を依頼するとき、依頼側の期待値としてはドラえもんの「ほんやくコンニャク」です。
ドラえもんの世界では、何の事前準備をせずとも「ほんやくコンニャク」を食べるだけで、言ったことがそのまま外国語に変換されて誰とでも話ができるようになります。
多くの通訳の依頼者は、通訳者は「ほんやくコンニャク」と同じ世界を実現してくれると期待しています。つまり、その辺を歩いている通訳者を突然拉致して、外国語が話されている場に連れていけば、準備をせずとも勝手にある程度のクオリティで訳してくれると考えています。
そのため、通訳者が「準備」を行うことについて考えたこともない依頼者が多いです。「準備」の必要性を詳しく説明しないと全くピンと来ない依頼者も多いです。
通訳者は異文化コミュニケーションにベストを尽くす
通訳者は、実際の通訳業務を「異文化コミュニケーション」と捉えています。
言葉を単純に言い換えるだけではなく、話者が伝えたい意図をくみ取って、伝えるのが自分たちの仕事と認識しています。。そして、意図をしっかりと伝えるためには、会議の背景や内容の事前理解をするための「準備」が必須と考えています。
そのため、通訳者としては、準備することは当たり前と捉えています。いかにプロでも、準備ができないと意図を汲み取った異文化コミュニケーションから遠ざかると考えており、準備に対する意識は非常に高いです。
と前提として「当たり前」な違いを述べました。ここまでは一般的によく言われていることだと認識しています。
それでは、現在はこのギャップを埋めるために、どのようなアプローチがとられているのでしょうか?次項では、私達の認識している最も多くとられているアプローチを記載してみます。
「あなたのために資料が必要なんですよ」
現在、通訳業界が最も行っているアプローチとしては、「少しでも会議を良くするために、事前に資料を出していただけると助かります」という形で企業を説得することだと考えています。私たちもそのようなコミュニケーションを頻繁に取ってしまいます。
「通訳者のためではなく、あなたの会議を良くするために、資料の事前準備が必要なんですよ」
企業が「少しでも会議を良くしたい」のは当たり前だし、資料を出してもらうことでそれが実現できるのは非常によくわかります。双方のメリットになるので一番正しいアプローチに感じます。
そのアプローチ、うまく行ってますか?
あなたのために、必要な資料なのですというアプローチは依頼者に響いてますか?私たちは、このアプローチが刺さらないケースもあると感じています。
どのような理由で刺さらないのでしょうか。
うまくいかない理由
理由は2つあると考えています。
1つ目は、前述した依頼者側が通訳者を「ほんやくコンニャク」として機能することを期待しているからです。そもそも「準備」は不要なはずなのに、なぜ資料を要求されるのか理解していません。仮に、「準備」が必要と認識しても、「ほんやくコンニャク」期待値で考えると、準備無しでもそれなりに訳せると考えています。
2つ目は、会社員の働き方として毎回綿密な準備をするより、ある程度のクオリティで早く回していくことが重視されるからです。この項では、この2つ目の理由を深掘りします。尚、多くの依頼者を個人の方ではなく、会社員やそれに近い働き方をする方前提にしております。
依頼者の方が仕事をする上で、「70%の完成度でも良いので、まずは終わらせること」が求められる場が非常に多くあります。日常の会議の大多数はこの70%の完成度の仕事に分類されます。「CEOが出席する」「大臣クラスの偉い人が参加される」ような非常に重要とされる場面においてのみ100%の完成度を追求します。。
大多数が分類される「70%」会議では、会議のクオリティは70%で良く、多少のミスは許されます。そのため、少しラフにその場で臨機応変に対応していくつもりで、スライド資料は会議開催の直前に完成し、参加者の一覧は用意をしません。加えて、発表部分の読み上げ原稿は特に用意せず、そのまま発表するケースが多くあります。
一方、「100%」の会議では一ミリのミスも許されません。そのため、1週間前にはスライド資料が完成し、参加者の肩書が一覧で準備されています。加えて、3日前には発表部分の読み上げ原稿まで用意されていいます。。
こうした違いがある中で、大多数が分類される「70%」会議に対して
「通訳者のためではなく、あなたのために資料の事前提出が必要なんですよ」
というアプローチを受けても、響きません。1つめの理由にも記載したとおり通訳者を「ほんやくコンニャク」の期待値を満たすものと捉えているので、準備も何もしなくても「70%」のクオリティになると思っているためです。
このアプローチが響いているのはきっと、「100%」会議のときだけです。
そのため、私達は単純に「会議をよくするために」「あなたのために」資料を出してもらうアプローチは再現性が低く、これだけではあまり有効ではないと考えております。
ここで依頼者の考えていることを一度まとめます。
- 依頼者は「ほんやくコンニャク」を求めており、通訳者がいればまあある程度のクオリティは出せる考えている。
- 依頼者は、ほとんどの場面で「100%」より「70%」で仕事をしている。
- 通訳者がいればその場でなんとなく「70%」にはなると思っている
- そのため、「会議をよくするため」に準備必要と言われても、それ以上良くする必要がないためあまりピンとこない。
対処方法
このような状況の中で私達、通訳業界の人間はどのようなことができるでしょうか?
- 思い込みを変える。通訳者が「ほんやくコンニャク」の期待値を満たすものではないことをきちんと伝える発注後に個別の案件ごとに伝える短期的な方法と、発注前からある程度理解しておいてもらう長期的な方法との両方がある。
- 短期
- 説明方法を工夫する – 聞いてもらうための土壌作り、より理解しやすいような実例を含めたり、発注者と発表者が異なるときにきちんと「発表者」に届く工夫をする
- 発表内容についての質疑応答の場を一度設け、直接話す場を作る
- 短期
- 長期
- みんなで発信していく:今の「当たり前」を変え、初めて頼む依頼者にとっても、「当たり前」として理解してもらうにはこちらの方法が良いと思ってます。発信していくことと、発言に影響力を
- 個の力を上げ、発言力を強める:発信した内容を強くするには、通訳者がもっと「個」としての発言力を強めていくのが良いと思います。「個」の力を強め、発信力を上げることのサポートもしていきたいです。
- 長期
- 通訳ありの会議に「70%」ではなく、必ず「100%」を出してもらう依頼者の仕事のスタイルを変えなくてはならないので、広く浸透させることはなかなか難しいでしょう。その会議一つ一つに対して、少しでも時間を割きやすくするために、以下のような短期的な工夫ができると思っております。
- 準備の手間を減らすお手伝いをする
- 準備に必要な資料を具体的に名前やサンプルを使って説明する
- 必要な情報を事前にまとめておき、アンケート方式やフィルイン方式で簡単に回答できるようにする
- 準備の手間を減らすお手伝いをする
- 「ほんやくコンニャク」になる/「ほんやくコンニャク」を作るお客さんの求めるものと一致した状態になるので、もしかしたら一番の最適解はここなのかもしれませんが、現実的に難しいでしょう。「完璧なAI」が誕生したらこれに当たるかもしれません。
- 諦める刺さる場合には刺さるので単調的に「あなたのために資料が必要なんですよ」と説き続けるか、もしくは「資料は出てこないもの」「出たらラッキー」と考えて粛々と案件をこなしましょう。。。
私たちが案件を行うときに行いたい施策
もちろん私達はまだまだできることがあると思っているので、交渉方法の工夫をしていきたいと思っています。AI作ったり、諦めたりではなくまだやれることがあります。
特に短期の方法としては、交渉している人から発表者に渡してもらうハンドブックを作ったり、通訳者を交えた質疑応答会を標準で開いたり、必要な資料の一覧と提供可否についてをまとめたりと行っております。またツール化によって依頼者側に簡単に内容を埋めてもらうだけで必要な情報が取れるようになる予定です。(もちろん、ツールはベータ版のため、不足点はあるかと思いますが順次増やしていく予定です)
長期の方法としても引き続きブログでの発信をしていきたいと思ってます。また、通訳者の個の力を高めていくようなお手伝いが何かできればとも思っていますので、その点に興味のある方もご連絡をいただけると非常に嬉しいです。
最後に
近況報告にとどまらず、最近考えていることを色々書いてしまいました。
賛成意見、反対意見ともに非常に嬉しいのでメールでのご意見、Twitterでのリプライ等お待ちしております。
通訳者の方やエージェントの方と通訳業界を盛り上げていければと思っております。引き続きco-inをどうぞよろしくお願いいたします。
(既に何社かお問い合わせをいただいておりますが、ツールのデモを使っていただけるエージェントの方をまだまだ募集中です。お気軽にお問い合わせください。)