最終更新日 2020年11月10日 by co-in

こんにちは。co-inと申します。「Company」と「Interpreter」の頭文字2文字ずつを取ってco-inです。名前の通り、通訳業界でのサービスを始めました。

いきなりですが、同時通訳の「ブース」を見たことがありますか?

これはあくまでも一例ですが、通訳者が同時通訳を行う際は、このようなブースに入って行います。遮音性の高いブースの中で話者の発言を聞き、自分の声で訳出していくことで、同時通訳付きの会議がより良いものになります。ブースはこの記事にてご紹介する、同時通訳をする際に必要な道具の1つです。

同時通訳の仕組みを理解いただけるよう、この記事ではブースを始めとした同時通訳システムにて利用される「通訳機材」について解説します。

通訳機材は、「会場の音をきちんと拾い、聞き手に適切に届ける」という目的を果たすために利用され、多くの種類の機材が存在します。この記事ではどのような種類の機材があるのかをご紹介し、それぞれの目的をご説明いたします。近年主流になりつつある「オンライン」での同時通訳の仕組みについてもご説明したいと思います。

同時通訳とは

通訳には大きく分けて3つの手法があり、そのうちの1つが同時通訳という手法になります。同時通訳は、「話者とほぼ同じタイミングで通訳者が話す通訳」を指します。話者の話に合わせて、ワンテンポ遅れて通訳者の訳出音声を聞くことができます。

話者の話とほとんど同時に音声を聞けるため、話し手に遅れずに内容を理解できることがメリットです。そのため、講演会や大きな会議など、参加者が多い場合には同時通訳を利用することで、時間のラグをなくすことが可能です。

関連記事:逐次通訳と同時通訳ウィスパリングの違いについて

逐次通訳と同時通訳の違い:どの通訳を手配するべき?

 

同時通訳にて必要な設備・環境

前述の通り、同時通訳では通訳者は話者からワンテンポだけ遅れて話します。童謡の「かえるのがっしょう」のようなイメージといえば伝わるでしょうか・・・?話者が先行し、通訳者があとから追随する形の「かえるのがっしょう」です。

そのため、話者と通訳者が少しずれて同時に言葉を発することになるので、そのまま両方の音声を聞いている場合、2つの音が混ざって聴衆にとっては正確に音声を拾うことができません。

  • 通訳者が利用する機材
  • 聴衆が利用する機材
  • その他音響設備

 

通訳者が利用するもの

マイク

通訳者の手元にはマイクが必要です。これはもちろん、通訳者が訳出した音声を拾うために利用されます。言語切り替えスイッチ(次項で説明します。)などの役割を兼ねたマイクシステム(通訳者ユニット)を利用することもあります。

言語切り替えスイッチ

通訳者は、話者の話している言語の反対の言語を話します。例えば、英日の同時通訳を行う場合、英語スピーカーが話している際に日本語で訳出を行い、日本語スピーカーが話している際には英語で訳出をします。そのため、手元のスイッチでどちらを話しているかを切り替え、必要な聞き手に届ける必要があります。その際に言語の切り替えスイッチが使われます。

イヤホン、ヘッドホン

通訳者が話者の話を聞くために、イヤホンやヘッドホンが使われます。遮音性の高いものを利用することで、自分の訳出した音声に邪魔されずに、話者の話だけを拾うことができます。

ブース

同時通訳者が座る席を囲った、遮音性の高い箱型の部屋をブースと呼びます。ブースを設置することで、通訳者の音声が周囲に漏れることを防ぐとともに、周囲の音を遮り、通訳者が話者の話を聞くことに、より一層集中できるようになります。エアコンの音や、聴衆の話し声、衣服の擦れる音などを遮断する効果もあります。

聴衆が利用するもの

レシーバー

通訳者の訳出した音声を拾う機械です。音声を拾い、付属のイヤホンから音声を流します。聞きたい言語のボタンがついており、何語の音声を拾うかを選択できます。後述するネット回線を使って遠隔同時通訳を利用する場合、聴衆のスマホをレシーバー代わりとして使うことも可能なケースもあります。

その他音響設備

ラジエーター

通訳者の訳出音声を、聴衆に届けるためのアンテナのような役割を果たします。会場内に隅々まで届くような場所を選んで設置する必要があります。赤外線を使った通信方式の場合、FM回線を使った通信方式などがありますが、応じた通信方式のラジエーターを手配することが必要です。ネット回線を使って遠隔通訳を行う場合、ネット回線を通して聴衆に届けることができるので、ラジエーターが必要ではないケースもあります。

 コントローラー

聴衆にどのように音声を届けるかの経路を指定します。マイクで拾った音声を送信機で拾い上げ、通訳音声をヘッドホンへ発信します。実際の発信アンテナとしてラジエーターが使われますが、コントローラーにて制御を行います。

デジタル録音機

通訳音声や話者の音声を録音したい際にデジタル録音機が使われます。会場で生の音を拾うのではなく、マイクで拾った音をデジタル録音機で記録することで、一層クリアな音声が録音できます。

その他

エンジニア

大きな会場での同時通訳となり、これらの機材全てを設定する場合、機材と音響の設定のできるエンジニアを確保する必要があります。

費用について

レシーバーだけが参加者の人数によって価格が変わります。他の機材は、通信方式ごとの固定料金です。ここまでで紹介した機材を全て利用すると、最低でも約30万円の費用は発生してしまいます。後述するネット回線を使った同時通訳を選択することなどにより、費用を抑えることが可能です。

———-

機材にはどのような種類があり、それぞれどのような目的があるかについて解説いたしました。機材を選択に当たって理解が必要となるもう一つの観点が「通信方式」です。通信方式とは、一言でいうと音声を届けるためのチャネルのことです。通信方式によって必要となる機材の種類は変わりませんが、希望の通信方式に対応した機材を選択する必要があります。

同時通訳にて利用される通信方式

通常の場合、機材会社や通訳会社が機材を選択します。そのため、通信方式に応じた機材がどの種類か(例:どの品番のマイクならどの通信方式に対応しているかなど)について、全てに精通している必要はありません。しかし、通信方式とそれぞれの違いについて理解し、発注する状態にしておくと機材会社や通訳会社により正確に要望を伝えることができます。

赤外線方式

赤外線方式のメリットは秘匿性が高いことです。赤外線は光の一種なので、壁などで遮断されると音声を聞くことができません。そのため、会場外から音声を傍受しようとしてもなかなか難しいです。

会場内の隅々まで届くように設定する必要があるので、各種機材やエンジニアによる念入りな設定が必要です。

FMラジオ方式

FM電波を使って通訳音声を届ける方式です。FM電波の特性上、大きめの会場でもクリアに音声を広いやすくなります。送受信に専門の機械が必要になることもあり、大規模な講演会など広めの会場で、予算にも比較的余裕のある際に利用いただくと良い方式です。

インターネット経由

ネット回線経由で通訳を行うことも可能です。会場にて話者の手元のPCとマイクを接続し、PCを通して通訳者に音声を届け、通訳者もPCを通して音声を聞き、PCと接続されたマイクを通して訳出することも可能です。この仕組を利用することで、遠隔での通訳も可能になります。会場の音声をPCで拾いネット経由で自宅の通訳者に届け、通訳者の音声もPCで拾って聴衆に届けることも可能です。

会場音声を拾うPCとマイク、Webアプリケーションのみで利用が可能になり、また通訳者も現地に派遣する必要がなくなるので、費用を抑えることが可能です。海外では遠隔同時通訳が徐々にメジャーになってきております。

通信方式まとめ

赤外線やFM経由の場合と、ネット経由で遠隔でやる場合の違いを簡単にまとめてみました。

赤外線やFM経由の場合は、それぞれのグレーの矢印の部分が赤外線やFM電波での通信となり、ネット経由の場合は、インターネットを通して通信をすることになります。

———-

ブースを始めとして機材についてご理解をいただけましたでしょうか。繰り返しにはなりますが、機材が必要となる理由は、「会場の音をきちんと拾い、聞き手に適切に届ける」ためです。オフラインでの同時通訳を利用する際には必要です。

海外ではネット経由での同時通訳は数年前からかなり主流になっているようです。費用や準備の面で簡単なものも多いため、私達としては「ネット経由」での同時通訳を基本的にはおすすめしていきたいと考えております。もちろん秘匿性や会議自体の目的なども勘案した上で、ベストなものをご提案できればと思っております。

私達について

私達は、同時通訳だけではなく、様々な通訳手配に対応しておりますので、よかったら私達のサービスページもご覧になってください。通訳手配に関して何かご不明な点があれば、フォームからお気軽にご連絡くださいね。

通訳を頼むのが初めての場合は是非こちらの記事もご確認ください。

【通訳を依頼したい方必見】一般的な通訳の依頼方法、料金、頼むにあたっての知識